巨大頭脳としての市場

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よく、市場に政治が手を突っ込んではいけない、といわれます。
果たして本当かどうか?
市場に自律性、(ビルトイン・スタビライザー、神の見えざる手)があるとすれば、その具体的なメカニズムは何なのか?

素人なりに、思考実験してみたいと思います。素人の特権として、間違えを恐れず、楽しさ優先で。
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先に、最近見た経済関連記事いくつか
*[[産業という名の麻薬 - 「ローマ亡き後の地中海世界」からの脱線:http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20090803/1249359933]]
“ひとつ面白い指摘だと思ったのが、当時の北アフリカでは、海賊があまりに儲かるので、「主要産業」になってしまった、という点だ。

*[[ついにきた、HFT:http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/b90293bda1b2e5c4653f9c6248321576]]
機関投資家や、市場の監視役によるチートの話。
-[[魚拓:http://s04.megalodon.jp/2009-0814-0110-13/blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/b90293bda1b2e5c4653f9c6248321576]]

ずるぅぅぅぅぅい

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さて、今回の記事の発端は、こちらの文章です。

“あまり知られていないことだが、ハイエクは最近、『感覚秩序』(1952)でニューラルネット(神経をモデルにしたコンピュータ)の原理を初めて提唱した科学者として「再発見」されている。脳も社会も、特定の中央集権的な計画なしに進化した自生的秩序だというのが彼の哲学だった
[[ハイエクとインターネット――自律分散の思想(池田信夫):http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/shunju.html]]

ハイエクは、市場を、ニューラルネットワーク (ニューロコンピューター) すなわち、 ”巨大な脳みそ”シミュレータとして捉えていたようです。
*巨大頭脳としての市場
市場には、大勢の投資家が参加しています。
で、彼らは、基本的に2種類の行動 (売るか、買うか)を行っています。
(先物、空売り、信用買、オプション、いろいろありますが)

つまり、星の数ほどの人数によって、一人一人が神経細胞の役割を果たすようにして、巨大な脳味噌を形成している、と捉えても、あながち誤りでは無さそうです。
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さて、ここからが本題

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市場は巨大な脳味噌シミュレータだと仮定した場合、、、
人間の脳味噌が、さまざまな出来事に対処し、バランスをとって生活しているのと同じく、市場も、自律的に価格のバランスをとることができる、そう仮定の上に仮定を積み重ねてみます。

さて、では、市場は間違えることはないのでしょうか?
*人は間違える生き物である
人間の脳味噌について考えてみます。
ここで、読者の皆様に質問してみましょう。

「あなたは、生まれてこのかた、一度でも失敗したことがありますか?」

おそらく、100%のかたが、この質問にイエスと答えるはずです。
そこから演繹して導かれるのが、”巨大な脳味噌であるところの、市場も、間違えることがありそうだ”、という推論です。

間違いを経験していな人間など、地上に一人も居ないのと同じように。

*麻薬=誤った利益(インセンティブ)
麻薬(ドラッグ)、というものが世の中には存在します。正確には覚せい剤とか、いろんな種類がありますけれども、たいていは、 使うと快楽を得ることが出来る薬品です。
癌の治療の過程で、痛みそれ自体を治療するためにモルヒネが使われたりすることもあるみたいです。

ただし、たいていは、後から酷い副作用があります、、、健康を害したり、連用をやめられなくなってしまったり。

さて、市場が巨大な脳だとしたら、社会通念 (モラルなど)に反して得られた”『間違った行動をしたときに与えられる利益』”は……”麻薬”(ドラッグ)に見立ててみましょう

たとえば、マルチ商法であったり、サブプライム証券であったり。

*自分だけは大丈夫
私は、サブプライムの証券化によって、低所得層が家を購入できるようなしくみや、ノンリコース型のローン自体は評価してもよいと思っています。

しかし、ここに、二つの誤った思い込みが存在しました
-住宅価格の右肩上がりが続くことを想定
-借り手の能力を大幅に超えた貸付であっても、家を差し押さえて売却すれば、貸付を回収できる

実際には、住宅を作り続ければ市場が飽和します
もしくは、差し押さえ物件を大量に中古市場に放出しても、やはり、需要と供給の関係で住宅価格が下落します

それぐらいのことは、アナリストのかたであれば、誰でも予測できたはずなのですが、そこから利益を得ることが出来る間は、、、麻薬による快楽が続く限りは、自分からやめることが出来ないものなのだろう、と推測します。
*エコポイントと楠木正成
では、市場に対するオペレーションは、厳しく取り締まるだけでよいのでしょうか?
ちょっとした例え話を。

“ 昔、ある孝行息子が、足腰の立たない父親を背負って、お殿様のお通りを拜ませていると、それがお目にとまって、
 
「感心な若者じゃ。褒美をつかわせ」
 
というので、沢山の頂戴物をした。
 
その話を聞いた親不幸で評判男、
 
「うまいことしやがった、俺もまねをして褒美にありつこう」
 
というので、次のお殿様のお通りに、嫌がる父親を無理やり背負って道ばたで待ち受けた。
 
 ところがお側づきの家来が親不孝者と知っていて、
 
「あいつはご褒美めあてに、あんな真似をしております。けしからぬ奴めにございます」
 
と申し上げた。
 
お殿様、おとがめかと思いのほか、
 
「よしよし、うそでもよい、褒美をつかわせ、親不孝者が孝行の真似をするとは感心な奴じゃ、賞めてつかわせ」
 
と仰せられた。
 
 この殿様の領内では褒美欲しさに親孝行の真似がはやり出した。それが嘘でも、真似でも、親孝行の行いをされると、老人達は真実悦んだ。悦ぶ老人の姿をみて、若者達は心から親を大切にするようになったという。
[[形より心へ:http://www.jtvan.co.jp/howa/Hasegawa/houwa065.html]]

この話、いろんなバージョンがあって、お殿様が楠木正成だったり、北条何某だったりするみたいなのですけれども…… 

たとえば、エコポイントであったり、エコカー減税であったりというものが、今年の前半に行われました。一部では、バラマキとも言われますし、私自動車を買わなかったので、「こんちくしょう」 とは思いますけれども(w

これは市場に対するオペではなく、財政政策ではありますけれども、社会として 「いいこと」 「やってほしいこと」 を行ったときに、適切な飴 (インセンティブ)を与える。たとえ、それが、ご褒美めあての行動であったとしても、次からの行動に影響を与える、かもしれません。

麻薬的な利益はいけませんが、 適度に楽しみをつける、ということは重要な気がします。

*政府による規制 = 子育て?
ちょうど、はてなブックマークに、こんな話が挙がっていました

[[よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」:http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20090808]]

と、つらつら考えるに、 市場というものは、赤ん坊と同じく、ただ放任して育てたら、グレてしまうかもしれません。かといって、厳しくがんじがらめに育てたら、やはり、融通の利かない子供に育って困ることもありそうです。

あまりにも小市民的な結論に達して、少し恥ずかしいのですけれども。。。市場に対して政治が取るべきたいどというのは、アメとムチ、北風と太陽、 ”「子育てと同じ」”と考えてもよさそうな気がします。

*市場=頭脳  実業=身体?
話が長くなったので、いきなり結論を一行で済ましてしまいますけれども、市場を頭脳にたとえるならば、実業が身体に相当するのではないでしょうか?

健やかなる精神は、健やかなる肉体に。。。、などと書くと、いかにもローマ的でアレですけれども 
(正確には、『健やかなる肉体に、健やかなる精神も』 みたいな言葉のようですが)

知徳体じゃないのですが、 あんまり頭でっかちでも、バランスが悪い気がします。頭脳が、肉体から独立しては、存在しえないのと同じように。

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